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エボロクマブはなぜ代用のアウトカムを主要評価項目とするのか

エボロクマブを調べ始めてから、添付文書、IF,審査報告書がことごとく代用のアウトカムなのでハードアウトカムでの試験がないか調べてみた。
 
 
エボロクマブの適用は次の通り(審査報告書より)
1.適用の前に十分な検査を実施し、高コレステロール血症、家族性高コレステロール血症ヘテ
ロ接合体、家族性高コレステロール血症ホモ接合体であることを確認した上で本剤の適用を考慮すること。
2.高コレステロール血症患者(非家族性)に本剤を適用するにあたっては、心血管疾患に罹患している又はその危険因子があるかについて検討すること。心血管疾患の危険因子としては、高血圧、糖尿病、低 HDL 血症、喫煙、慢性腎臓病、家族歴、年齢(高齢者)、性別(男性)等を考慮すること。
3.HMG-CoA 還元酵素阻害剤を基礎治療薬とした脂質低下薬物療法で十分な効果が認められない場合に本剤の適用を考慮すること。
4.本剤の単独療法に関する有効性及び安全性は、日本人においては確立していない。
 
 
 
疑問:なぜ添付文書も、審査報告書も代用のアウトカムなのか。
→審査報告書に「主要評価項目の妥当性について」という項目がある。
 
HC の治療目的は心血管イベントの抑制であるが、本申請では心血管イベントの抑制効果を検証した臨床試験成績は提出されていないことから、機構は、LDL-C 値の変化率を本剤の検証的試験における有効性の主要評価項目としたことの妥当性について、申請者に説明するよう求めた。
申請者は、以下のように説明した。疫学研究データから、LDL-C は多様な患者集団において、冠動脈疾患リスクの強力な独立予測因子であることが示されている。
 
として次の二つの論文を上げている。
・スタチンの臨床試験から LDL-C 低下の心血管系へのベネフィットについてのエビデンスが得られている(Baigent C etal. Lancet 376: 1670-1681, 2010)。
・急性冠動脈症候群患者を対象に、シンバスタチン単独とシンバスタチンとエゼチミブの併用時の心血管リスクを比較した IMPROVE-IT 試験では、1 年後の平均LDL-C値は単剤群では69.9mg/dL、併用群では53.2mg/dLであり、7年後の主要複合評価項目(心血管死、主要冠動脈イベント及び非致死性脳卒中)の発現率は、単剤群では 34.7%、併用群では32.7%であり、併用群で有意に低下した
Cannon CP et al. N Eng J Med 372: 2387-2397, 2015
そこで読んでみる。
The primary end point was a composite of cardiovascular death, nonfatal myocardial infarction, unstable angina requiring rehospitalization, coronary revascularization (≥30 days after randomization),
primary end point at 7 years was 32.7% in the simvastatin–ezetimibe group, as compared with 34.7% in the simvastatin-monotherapy group (absolute risk difference, 2.0 percentage points; hazard ratio, 0.936; 95% confidence interval, 0.89 to 0.99; P=0.016).
 
ARR=2%であり、NNT=50
だがプライマリアウトカム 0.936(0.89–0.99)
は複合アウトカムなので一つ一つを見てみると全ての理由の死、心血管死、冠動脈血管死では有意差がない。
非致死性MI 0.87 (0.80–0.95)
致死性MI 0.84 (0.55–1.27)
Any stroke 0.86 (0.73–1.00) 
Ischemic stroke 0.79 (0.67–0.94) 
Hemorrhagic stroke 1.38 (0.93–2.04)
などと、その方向性は一貫していない。
 
その後の図で、LDL-Cの濃度と、主要血管イベントの発生率の相関を見ているが、主要血管イベントの内訳自体に不確かさがあるので相関があると言い切れるだろうか。
 
以上のように、LDL-C の低下により臨床的ベネフィットが得られ、さらに LDL-C がより低下するほど、より大きな臨床的ベネフィットが期待できることが示されていることから、本剤投与により認められた LDL-C 低下作用は臨床的意義があると考える。
 
と言う結論で締めくくられている。
 
ここでコクランレビューのアブストラクトを読んでみる。
 
P:patients who are unresponsive to, or unable to take, existing LDL-C-reducing therapies.
I:PCSK9阻害剤
C:プラセボ(13個のRCT)
エゼチミブ(2個のRCT)
エゼチミブとスタチン(5個のRCT)
O:プライマリ:
PCSK9阻害剤の脂質パラメーターおよびCVD発生率に対する短期(24週)、中期(1年間)、および長期(5年間)の効果
セカンダリ:
2型糖尿病、認知機能および癌の発生率に特に焦点を合わせて、PCSK9阻害剤の安全性を定量化する。 
 
結果
・LDL-Cの低下率
Compared with placebo, PCSK9 inhibitors decreased LDL-C by 53.86% (95% confidence interval (CI) 58.64 to 49.08; eight studies; 4782 participants; GRADE: moderate) at 24 weeks; compared with ezetimibe, PCSK9 inhibitors decreased LDL-C by 30.20% (95% CI 34.18 to 26.23; two studies; 823 participants; GRADE: moderate), 
compared with ezetimibe and statins, PCSK9 inhibitors decreased LDL-C by 39.20% (95% CI 56.15 to 22.26; five studies; 5376 participants; GRADE: moderate).
・CVDイベントのリスク
Compared with placebo, PCSK9 inhibitors decreased the risk of CVD events, with a risk difference (RD) of 0.91% (odds ratio (OR) of 0.86, 95% CI 0.80 to 0.92; eight studies; 59,294 participants; GRADE: moderate). 
Compared with ezetimibe and statins, PCSK9 inhibitors appeared to have a stronger protective effect on CVD risk, although with considerable uncertainty (RD 1.06%, OR 0.45, 95% CI 0.27 to 0.75; three studies; 4770 participants; GRADE: very low). 
・mortality
No data were available for the ezetimibe only comparison. Compared with placebo, PCSK9 probably had little or no effect on mortality (RD 0.03%, OR 1.02, 95% CI 0.91 to 1.14; 12 studies; 60,684 participants; GRADE: moderate). 
 
・ risk of any adverse events
Compared with placebo, PCSK9 inhibitors increased the risk of any adverse events (RD 1.54%, OR 1.08, 95% CI 1.04 to 1.12; 13 studies; 54,204 participants; GRADE: low). Similar effects were observed for the comparison of ezetimibe and statins: RD 3.70%, OR 1.18, 95% CI 1.05 to 1.34; four studies; 5376 participants; GRADE: low. Clinical event data were unavailable for the ezetimibe only comparison.
 
Available evidence suggests that PCSK9 inhibitor use probably leads to little or no difference in mortality. 
PCSK9阻害剤対活性治療剤およびプラセボを評価するために、より長い追跡調査を伴う大規模な試験が必要である。これらの研究において高リスク患者が主に含まれているため、結果の一次予防への適用可能性は限られている。最後に、推定されたリスクの差は、PCSK9阻害剤が絶対リスクを(たいていは1%未満まで)しか変化させないことを示している
 
まず、この論文ではっきりわからないのが、PCSK9阻害剤群ではスタチンを併用していないのかいるのか。
海外ではスタチンを併用しない試験も行われているようなのでそちらも見てみるべき。
 
ここでFOURIER試験(スタチンへの上乗せによる心血管イベントの予防効果を検証)を読んでみる。アブストのみ
 
P: 27,564 patients with atherosclerotic cardiovascular disease and LDL cholesterol levels of 70 mg per deciliter (1.8 mmol per liter) or higher who were receiving statin therapy
I:  evolocumab (either 140 mg every 2 weeks or 420 mg monthly) 
C: placebo 
O: The primary efficacy end point was the composite of cardiovascular death, myocardial infarction, stroke, hospitalization for unstable angina, or coronary revascularization. 
secondary efficacy end point was the composite of cardiovascular death, myocardial infarction, or stroke. 
 
The median duration of follow-up was 2.2 years.
randomized, double-blind, placebo-controlled trial
 
Relative to placebo, evolocumab treatment significantly reduced the risk of the primary end point (1344 patients [9.8%] vs. 1563 patients [11.3%]; hazard ratio, 0.85; 95% confidence interval [CI], 0.79 to 0.92; P<0.001) 
key secondary end point (816 [5.9%] vs. 1013 [7.4%]; hazard ratio, 0.80; 95% CI, 0.73 to 0.88; P<0.001). 
 
プライマリアウトカムでは有意にエボロクマブ群の方が心血管イベントのリスクを下げたとしているが(絶対リスク差 1.5%)複合アウトカムなのでその一つ一つを検証しなければならないが、今回はできない。
ちなみにこちらの試験はAmegen社の助成があるとのこと。
 
有害事象では新規の糖尿病の発症、神経認知障害の発症に差は見られないとしている。
here was no significant difference between the study groups with regard to adverse events (including new-onset diabetes and neurocognitive events), with the exception of injection-site reactions, which were more common with evolocumab (2.1% vs. 1.6%).
 
仮に、エボロクマブ2Wに1回、ロスバスタチン5mgで1ヶ月分のお薬代(3割)だと
約14800円。心血管イベントの既往がありだと抗血小板薬など他の薬も処方となり約2万円/月。
 
患者の立場なら、月2万円の自己負担なら真のアウトカムの絶対リスク差が納得のいくものであってほしいと思うに違いない。自分の手で2万円を支払って帰るのだから。
 
だから。。全文読みたい。
 
みなさん、お疲れ様でした。最後までお読みいただきありがとうございます。