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復習:CASE3 この呼吸困難はトラスツズマブによるものですか?

副作用のみかた・考えかたの本より復習

CASE3

この呼吸困難はトラスツズマブによるものですか?

詳細な症例は割愛。

Step1:被疑薬が原因である「もっともらしさ」を考える

Infusion related reactionの症状

※症状は1型アレルギーと似ているが、機序が違うのでCTCAEでもアレルギー反応と区別されている。

発熱、悪寒戦慄、低血圧、呼吸困難など

投与中、または投与開始後2時間以内に起こることが多いとされ、初回投与が最も多く、二回目以降のリスクは下がる。

根拠;http://theoncologist.alphamedpress.org/content/13/6/725

トラスツズマブ、ペルツズマブを含むモノクローナル抗体によるものは5〜40%と頻度は高いがその多くは発熱、悪寒などで致死的になることは多くない。

根拠:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17522249

しかし、世界的に行われた市販後調査で25000人の患者に投与され重篤infusion reactionとして報告されたのは74件。

内訳は呼吸器症状65%,悪寒戦慄32%,

死亡例 9名

根拠:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11694789

 

【まとめ】

症例だと、呼吸苦、チアノーゼ、喘鳴出現。酸素飽和度の低下でICU入室。

Infusion reactionとするとGrade 4(CTCAE)

重篤な例と考える。

 

Step2:被疑薬以外が原因である「もっともらしさ」を考える

[1]セフジニルのアナフィラキシ

これを除外するために必要な知識が次の★!

★セフジニルのアナフィラキシーの頻度:

0-0001〜0.1%と低いが致死的になりうるため鑑別にあげる必要がある。

根拠:https://www.nejm.org/doi/10.1056/NEJMra993637(全文見られず)

アナフィラキシーの診断基準:

 

3つのうち1つでも満たせばアナフィラキシーの可能性が高い。

  1. 皮膚、もしくは粘膜組織の症状(発赤、発疹)を含む急性発症(数分〜数時間)の疾患、かつ以下の少なくとも一つを満たす。呼吸器症状・血圧低下
  2. アレルゲンになりそうなものに暴露された後(数分〜数時間)、以下のうち二つ以上を示す。皮膚、粘膜組織の関与・呼吸器症状・血圧低下・持続する消化器症状(腹痛、嘔吐)
  3. アレルゲンと知られているものに暴露された後(数分〜数時間)血圧低下

 

→推論:典型的なセフェム系抗菌薬によるアナフィラキシーと合わない。

皮膚や粘膜組織を含む症状なく、血圧低下もなかったので、当てはまるとすれば2.だが消化器症状ないため2も除外される。

 

[2]抗HER2薬による心筋障害

 これを除外するために必要な知識が次の★!

 

★心筋障害の頻度:

7〜27%と臨床試験によっては幅があるが、次のリスク因子では高くなると推測される。

★心筋障害の性質:

抗HER2薬による心筋障害は蓄積性ではないが今回のように初回で起きるかは不明。

リスク因子:

アンスラサイクリン系抗がん薬を併用、投与前に心機能低下がある場合。

根拠:https://www.amjmedsci.com/article/S0002-9629(15)00029-4/abstract

The incidence of cardiomyopathy is not dose dependent and in most cases it is reversible after discontinuation of the drug and treatment with heart failure medications. Severe adverse outcomes including death or permanent disability are rare.

 

→推論:ICU入室時の経胸壁心エコーでLVEFが軽度低下しているが著名な低下でない。(著名な低下は概ね30%以下)

抗HER2薬による心筋障害は否定的と推測。

 

そもそも、抗HER2薬による心筋障害とはどのような臨床症状なのか。

心臓を収縮させる筋肉が侵されると心臓のポンプ機能が低下します。

心臓における信号の通り道が侵されると心電図異常や不整脈が出現します。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/shinzo/46/12/46_1615/_pdf/-char/en

http://www.jcc.gr.jp/journal/backnumber/bk_jjc/pdf/J051-2.pdf#search=%27

 

http://www.toneyama-hosp.jp/patient/forpatient/pdf/care2008-22.pdf#search=%27

息切れ、呼吸困難、チアノーゼなど心不全の臨床症状が見られるだろう。

 

[3]肺塞栓症(PE)

これを除外するために必要な知識が次の★!

★PEの臨床症状

 呼吸困難,胸痛が主要症状であり,呼吸困難,胸痛,頻呼吸のいずれかが97%の症例でみられたとする報告もある

根拠:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/7813325

 

★PEの診断基準

いくつか診断基準があるがここではmodified Wells criteriaを用いている。

症例では1点(悪性疾患)でPEの可能性は低い。

可能性が低くても(<4)D-ダイマーが陰性の確認が除外診断には必要。

根拠:https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/202176

 

MSDマニュアルのサイトから

下肢のDVTは,肺塞栓症(PE)を引き起こす可能性がはるかに高く,これはおそらく生じる血栓の量が多いことに起因する。大腿部の浅大腿静脈および膝窩静脈と腓腹部の後脛骨静脈および腓骨静脈が最も侵されやすい。腓腹部の静脈に生じたDVTが大きな塞栓の発生源となる可能性は比較的低いが,近位の大腿静脈まで進展して,そこからPEを引き起こす可能性もある。DVT患者の約50%は潜在性のPEを有し,PE患者の30%以上は証明可能なDVTを有する。

 

【まとめ】

ここで、症例では被疑薬が原因であるinfusion related reactionと推測している。

が、その後の医師のコメントで、「まず、呼吸困難の原因として、トラスツズマブのinfusion related reaction、次にトラスツズマブのアナフィラキシーを考えた」

という記述がありなるほどなと思いました。

 

こんな風に推論には多くの知識が必要でそれ、一つ一つに根拠があるということを大切にして考え方を学んでいこうと思いました。